2011年7月25日月曜日

各XIS (0,1,3) とHXDのNormが食い違う理由

XISとHXDのNormが食い違う理由についての考察?のようなもの。
後輩から質問を受けたのでまとめた。
間違えているかもしれないので注意。指摘していただけると助かります。


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以下、簡単に各XIS (0,1,3) とHXDのNormが食い違う理由になりうる較正上の
不定性について簡単に書いておきます。

1. XISのnon-X-ray backgroundの不定性
宇宙線由来のバックグラウンドは観測(衛星軌道)毎・検出器毎、更に検出器上の
場所毎に異なります。XIS 0,1,3間のnormalizationが観測毎に異なるのは主にこのNXBの
揺らぎによる筈です。暗い天体のハードな帯域 (5-10 keVあたり) のfluxはこの不
定性の影響を大きく受けます。 BGを視野内の暗い所から引くという解析では、
この不定性の影響が大きくなります。 xisnxbgenというftoolを使い、「(1) SRCとBG
の領域毎にNXBのスペクトルを作り、(2) SRCとBGの各々NXBを差し引いた上で更に
SRCからBGを引く」といったことを行えば、NXBの不定性は小さくなりますが少し
統計誤差が大きくなります。

2. XISのcontaminationの較正の不定性
XISには可視光遮断フィルターがついていますが、この表面にX線を吸収してしまう汚染
物質(ゴム等からアウトガス)が付着しつつあることが知られています。この汚染物質は
観測時期が進むにつれ増加しており、検出器毎、更に検出器上の場所毎に異なります。
この汚染物質量の較正の不定性はXIS 0,1,3間のnormalizationが異なる原因になります。
ソフトな帯域 (0.5-2 keVあたり) のfluxはこの不定性の影響を大きく受けます。


3. XRTの望遠鏡の較正の不定性
XRTの有効面積レスポンス (arf) を計算するモンテカルロシミュレーション
 (xissimarfgen) 内では設計図どおりの理想的な望遠鏡の形状が仮定されてい
ます。しかし、実際には打ち上げ (+経年劣化?) によりXRTの形状がいくらか変化し
ていることが分かっており、XIS 0,1,3間、およびPINとのnormalizationの
食い違いの原因になります。この不定性はXIS 0,1,3で異なり、更に光軸(視野)
中心から離れるにつれて大きくなります。

4. 衛星の姿勢の揺れの不定性
観測中に「すざく」衛星の姿勢が揺れ、それが補正できないために天体が
光軸中心からずれてしまい、有効面積の見積もりを間違えてしまうことが
わかっています。XIS 0,1,3間、およびPINとのnormalizationの食い違いの
原因になります。この不定性は光軸(視野)中心から離れるにつれて大き
くなります。これまで割と良く補正されていたのですが、最近になってまた
姿勢の揺れが問題になりつつあるようです。aeattcor2というftoolを使うと少し
改善されるかもしれません。